原則として会社の一存では変更できないこと

労働条件については、雇用契約の成立をもって契約条件となるため、事後に会社の一存で変更することはできず、変更をしたい場合には、労働者との合意が必要となります。

就業規則による不利益変更も限界があること

労働条件に関しては、就業規則によって一律に定めたり、変更をしたりすることができます。

もっとも、労働者にとって不利益となる変更については、内容が合理的なものであり、かつ、変更内容を周知することが必要とされています(労働契約法9条ただし書)。
特に、賃金などの重要な労働条件に関しては、裁判例上、高度の合理性が要求されることになっています。

そのため、労働者にとって不利益となる変更、特に賃金等の重要な変更に関しては、就業規則によっても容易にはなし得ないものとされています。

減給に関する一部の例外

減給は、給料という重要な労働条件を不利益に変更するものですので、就業規則などでも容易に行うことはできず、原則としては労働者との合意がない限り、実施は困難です。
例外として、例えば、懲戒処分として行う場合と、人事考課として行う場合等が考えられます。

もっとも、懲戒処分に関しては、客観的合理的な理由があり、かつ、処分内容が社会的にも相当と言えなければ無効になります(労働契約法15条)。
減給は、解雇までとはいかないまでも、労働者の生活に影響を及ぼすものですので、問題とされる事由と処分内容との均衡等が取れていなければ、やはり懲戒処分として行っても、違法となり得ます。

また、人事考課として行う場合、使用者には労働者の評価に関して裁量を有しておりますので、実施することそれ自体ができない訳ではありません。
もっとも、減給を伴う人事考課に関しては、労働者に対する影響も大きいため、就業規則の不利益変更と同じく、相応の合理性が要求されます。そのため、合理性を伴わない減給であれば、裁量の逸脱濫用として認められないことも考えられます。

このように、減給に関しては、たとえ例外に基づいて行う場合でも、法律及び裁判例上で厳しい要件が課されており、実施しても効力が否定される可能性があります。

そのため、減給を実施できるか、また、実施された減給を争えるかについては、法的な観点から十分な検討を交えながら判断していく必要があります。

労働条件の変更方法と争い方

前述のように、特に重要な労働条件の不利益変更については、会社の判断のみで実施することは難しいことが多いですので、基本的には、労働者との合意によって行うようにされるべきです。

労働者としても、自身に不利益が生じる変更を受け入れることは通常考え難いため、何故そうした変更をしなければならないのか、また、こうした交渉に先立って対応できるだけの措置を実施したか等を十分に説明されることが必要です。

こうした説明の準備や事前対応を行うことは、減給を実施する際にも必要とされますので、必ず行っておかれるべきと思われます。