残業代や深夜手当の支払いは義務であること

正社員かアルバイトかを問わず、法律上、以下の場合には、割増賃金を支払わなければならないとされています。

①残業代
1日8時間、1週間あたり40時間を超える労働をさせた場合、25%増しの残業代を支払わなければいけない(労働基準法37条1項本文、割増賃金令)。

なお、残業時間が60時間を超える場合、50%増しになるとされています(労働基準法37条1項ただし書)。ただし、事業規模の小さい会社については、この規定の適用を一定期間、免除されています(労働基準法附則138条)。

②深夜手当
午後10時から午前5時までの間に労働をさせた場合も、25%以上の割増をした、深夜手当てを支払わなければならない(労働基準法37条4項)。

③休日手当
休日に労働させた場合、35%増しの休日手当を支払わなければいけない(労働基準法37条1項、割増賃金令)。

変形労働時間制等を採用しているかによって、計算の仕方に若干の違いは生じますが、こうした義務はいずれの使用者にも適用されます。

就業規則や契約で減らしても無効となること

労働基準法の規定は、強行法規と呼ばれるものであり,契約などでより低い条件に変更しても、無効になるとされています。

使用者によっては、残業代や休日手当について、独自の金額(例えば、1回につき1000円など)を定めているものもありますが、上述のように、労働基準法の定めを下回る部分は無効となりますので、このような定めをいくらしても、差額分の支払義務は免れません。

固定残業代制度も限界があること

使用者によっては、残業代の計算を簡単にしたり、または、支給総額を節約するために、固定残業代制度を導入していることがあります。

多くの裁判例上、基本給と固定残業代部分との区別がつくか、また、想定している時間を超過した分について、追加の残業代を支払う実態があるか等を見ながら、残業代としての実態がある場合にはじめて、固定残業代は、残業代の支払いとして認められることになります。

このように、内容によって、固定残業代を、残業代支払いの一部として加味できるかが変わります。こうした制度がある使用者における残業代を考える場合には、固定残業代の有効性も検討する必要があります。

残業代の請求方法や争い方

【請求の仕方】
残業代の請求にあたっては、タイムカードをはじめ、残業時間がわかる資料を用意する必要があります。

勤務先によっては、労働時間の管理がいい加減でタイムカードがない場合や、一度タイムカードを切った後に事実上の残業を強いられるケースもあります。こうした場合、一見してわかりやすい残業時間のわかる資料はないこともあります。

もっとも、断片や私的な記録であっても、労働時間が分かる資料があれば、請求ができるケースもあります。手元資料で請求ができるかについては、訴訟などにおける認定の仕方などの知識も必要となりますので、弁護士に見てもらいながら、判断をしてもらうと良いかと思われます。

【請求の争い方】
前述のように、残業代等の請求に関しては、実際の労働時間が大きな争点となります。

残業代の支払い自体は、確かに法律上の義務ですが、実際に残業代請求がなされた事案の中には、残業には当たらない時間等まで含めた過大請求をしてきているケースも多々あります。
また、雇用契約の条件が不明確になっている場合、請求者の独自の計算方法で請求がなされていることもありますが、厳密には計算方法が誤っていることもあります。

そのため、残業代請求がなされた場合でも、その請求を直ちに鵜呑みにするのではなく、内容が正しいのかを精査していく必要があります。

残業代等の計算についての助言

残業代等の計算にあたっては、賃金の中でも、計算基礎とできるものとできないもの等があります。
また、計上されている時間についても、厳密な意味で労働時間と考えて良いかについては、法的な判断が必要となることが多いです。

こうした理由から、残業代の正確な計算や、それに対するをするためには、会社や個人が自力で行うことが難しいことが多いです。正確な把握に基づく交渉や訴訟を行うためには、弁護士に相談しながら、助言を求めていくべきです。